runaway cat : 猫家出

新しいアパートに越してここ数日，落ち着かない様子だったうちの猫．いつもの，ぬいぐるみか剥製と見まごうばかりの不動ぶりと打って変わって，引越荷物の荷解きで忙しい飼い主を手伝おうともせず，室内をうろうろ．
こっちゃあ猫の手も借りたいってのに！

猫は家に居着くと言う．しかし寂しがり屋のうちの猫，家より人が恋しい様子である．最初は落ち着かないだろうが，我々が一緒なら平気だろうと思っていたのだが・・・．

この日，猫が家出した．

どうやら配達を受け取る時に，玄関からするっと抜け出したらしい．
猫の行動範囲は100~200 m程度と言う．夫と手分けし，家の周りを何周と探しても見あたらない．
こんな事は初めてである．

これまで完全箱入り息子であったうちの猫，だが飼い主家族が出入りする家の外の世界には興味津々だった．帰宅すると玄関で出迎え．そしてそのまま脱走を試みる．だが悲しいかな，臆病者で寂しがり屋のチキン猫なのである．テネシーのアパートでも，たまに脱走を試みた事があるのだが，玄関から5mも離れると固まってしまうのだった．
そんなヤツが家出である．テネシーの広くて快適なベランダに居着いてしまったのだろうか？！

もしかしたら，昨年のフランスに行っちゃった猫の様に，船に乗って太平洋を渡っちゃったりして．うちの猫にそんな根性と度胸があるとはとうてい思えなかったが．

日本からアメリカ，アメリカから日本，そして実家に暫く置いておかれたかと思うと，今度はまた新しいところへ．そりゃ〜家出もしたくなるかも．
もし迷子になったり，車にひかれたらどうしよう，これが今生の別れかも知れぬ．
捜索を夫に任せ，後ろ髪引かれる思いで職場へ．とはいえ，気が気ではなかった．
夫は，町内を更に数回回り，まさかと思いつつも数キロ離れた実家まで捜索に行ったらしい．

幸いにも，夕方，猫は発見された．夫が捜索後に家に戻ったら，玄関に置いたゴミ袋の山に隠れていたそうである．自分で帰ってきて待っていた様子．良く帰れたな！
数時間ぶりに帰宅した猫，初めての自力外散歩はちょっと怖かったらしい．夫がドアを開けると一目散に室内に入っていったそうな．
その知らせを聞いて私もほっと安堵のため息．

この一件以来，彼は暫く玄関から外に出ようとしなかった．
やっぱり引越は落ち着かないのだなあ，人間でも良くも悪くもストレスになるのに，猫には尚更，とちょっと申し訳ない気分になった一件であった．